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わかりやすい漢方薬解説・漢方理論解説

気(き)とは

身体を構成する気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)という要素のなかでも気は多くのはたらきを担っています。このページではまず気の生成、そして気血津液論には規定されている気の主なはたらきである栄養(えいよう)作用、推動(すいどう)作用、温煦(おんく)作用、防御(ぼうぎょ)作用、固摂(こせつ)作用、気化(きか)作用について解説してゆきます。くわえて気にはその機能別に元気(げんき)、宗気(そうき)、営気(えいき)、衛気(えき)という異なった呼び名があります。この点も補足して説明してゆきます。


気の生成


私たちは日頃、食べ物や飲み物を摂取し、呼吸をすることで生きています。この流れを漢方(中医学)の視点から説明すると、まず摂取された食べ物や飲み物は五臓のひとつである脾(ひ)において水穀の気(栄養素の塊のような存在です)となります。


この飲食物を由来とする水穀の気と、呼吸によって大気から取り込まれた清気(せいき)が結合することで気が生まれます。生まれた気は脾から肺(はい)に移され、そこから全身に散布されてゆきます。その後は肝(かん)の力によって気の運行はコントロールされ、上記で紹介したような能力を発揮し、消費されてゆきます。このように飲食と呼吸によって生まれる気を後天の気と呼びます。


「後天の気」があれば「先天の気」も存在します。人間は誕生する際、両親から精(せい)という物質を受け継ぎます。精は生命エネルギーの結晶のような存在であり、腎(じん)に蔵されています。この精から生み出される気が先天の気と呼ばれるものです。生まれつき体力が充実している子は親から充分な精を受け継いだと漢方医学では解釈します。


気のはたらき


栄養(えいよう)作用

栄養作用とはその名前の通り、身体に栄養を与えて五臓六腑(ごぞうろっぷ)などがしっかりはたらけるように活力を与えるはたらきといえます。この栄養作用はしばしば血のはたらきと説明されるケースがあります。


この理由として気は津液と結合して血となり、血の姿となって身体を巡って栄養するからです。栄養作用をどちらのはたらきと定めるか議論はあるようですが、ここでは気のはたらきとします。


推動(すいどう)作用

推動作用とは主に血や津液を身体中に巡らすはたらきです。したがって、血や津液は気の助けがないとしっかり巡ってゆくことが出来ないということです。停滞した血と津液はその力を発揮できないだけではなく、悪影響を及ぼしてしまいます。


冒頭で「推動作用は主に…」としました。その理由として推動作用は血と津液以外にも成長に関わったり、五臓が活発に動くための原動力にもなっているからです。つまり、ダイナミックな生命活動全般に推動作用は貢献しているのです。


温煦(おんく)作用

温煦作用とは身体を温めるはたらきです。気が存在することによって体温は一定に保たれます。ちなみにあまり見ることのない「煦」の文字には「あたためる」という意味があります。


防御(ぼうぎょ)作用

防御作用とは外邪(がいじゃ)から身体を守るはたらきです。ここで登場した外邪とは寒邪(かんじゃ)・暑邪(しょじゃ)・火邪(かじゃ)・湿邪(しつじゃ)・燥邪(そうじゃ)・風邪(ふうじゃ)からなる六淫の邪を指します。より具体的には強い暑さや寒さといった人体に害となる環境要因のことであり、気が充実していれば防御作用によって簡単に体調を崩さずに済みます。


固摂(こせつ)作用

固摂作用とは身体にとって必要なものを身体内にしっかり保持するはたらきです。「身体にとって必要なもの」とは血や津液、汗や尿、さらに内臓などが含まれます。


気化(きか)作用

気化作用とは主に気・血・津液・精の相互に変換されることを指します。具体的には血は気から生まれますが、血から気へも生まれ変わるケースなどが挙げられます。くわえて気化作用にはもうひとつの意味があり、不要な水分を尿や汗として排出するはたらきが含まれます。


気の名称


元気(げんき)

皆さんもご存じのとおり、日常生活において「元気」という言葉は頻繁にもちいられています。その意味としては体力そのものや健康状態の高さを示すものではないでしょうか。一方の漢方(中医学)における元気にはより厳密な定義があります。


漢方(中医学)における元気のはたらきは生命活動を営むための最も基本的な原動力といえます。元気は両親から受け継がれ、生きてゆくうえで消費されてゆきます。そして、私たちは飲食を通じて気を生み出し一部は元気となって補充されます。しばしば元気は原気(げんき)や真気(しんき)とも呼ばれます。


宗気(そうき)

宗気は主に呼吸を行ったり血を身体中に巡らすための気といえます。その他にも身体を動かしたり、視覚や聴覚といった機能も支えています。このようなはたらきを持つ宗気は動気(どうき)とも呼ばれます。


営気(えいき)

営気は身体を栄養する気であり、栄養作用を発揮する気のことを指します。このはたらきは前出の通り、血の機能とも呼べるので営気は営血(えいけつ)とも呼ばれます。


衛気(えき)

衛気の主なはたらきは外邪の侵入を阻んだり、侵入した外邪を追い出すものです。気の防御作用はこの衛気が担っています。その他にも衛気は身体を温めたり、発汗の調節も行っています。したがって、衛気は温煦作用にも深く関わっていることになります。


気のまとめ


ここまでざっと気のはたらきや名称などを挙げてきました。やや抽象的な表現も多くなってしまい混乱しやすいかと思います。一方で重要な点は気が多彩なはたらきを担っていることをいつも認識しておくことだと思います。特に推動作用や固摂作用は血と津液とも強く関係しているので重要です。温煦作用と防御作用の低下はそれぞれ冷え性(冷え症)や病気のかかりやすさという、日常的に問題となるポイントに関わってくるので忘れてはいけない機能といえます。


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文・女性とこどもの漢方学術院(吉田健吾)