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わかりやすい漢方薬解説・漢方理論解説

当帰飲子(とうきいんし)

当帰飲子の出典


済生方


当帰飲子の構成生薬


当帰5、芍薬3、川芎3、蒺梨子3、防風3、地黄4、荊芥1.5、黄耆1.5、何首烏2、甘草1


※上記は一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)より
※単位は1日当たりのグラム


当帰飲子の効能・効果


体力中等度以下で、冷え症で、皮膚が乾燥するものの次の諸症:湿疹・皮膚炎(分泌物の少ないもの)、かゆみ


※上記は一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)より


当帰飲子の処方解説


当帰飲子は四物湯を構成する生薬(地黄、芍薬、当帰、川芎)に何首烏、蒺藜子、防風、荆芥、黄耆、甘草をくわえたものです。当帰飲子において四物湯の部分と何首烏が補血することで肌に潤いを与え、蒺藜子、防風、荆芥が痒みを抑えます。黄耆と甘草は気を補うことで四物湯の補血作用を側面から支援します。


当帰飲子はその補血作用の高さから、肌をみずみずしくする作用に秀でています。したがって、カサカサして粉を吹いているような乾燥肌の痒みにとても適しています。外気が乾燥する冬に痒みが悪化し、外見からはあまり異常が見られないような老人性皮膚掻痒症やアトピー性皮膚炎などに当帰飲子は最適です。


その一方で黄芩や黄連といった熱を鎮める生薬を含んでいないので、痒みや赤みの強い皮膚トラブルには向いていません。そのようなケースでは黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、温清飲(うんせいいん)、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)などが適しています。


くわえて、蒼朮や麻黄のように水分代謝を促す生薬もないので、ジュクジュクとした湿疹にも不向きです。患部の湿性が目立つ場合は消風散(しょうふうさん)や越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)などが選択されます。


当帰飲子における補足


漢方(中医学)では血が不足すると肌が乾燥したり、髪や爪の荒れ、めまいやふらつき、疲労感、動悸なども起こりやすくなります。当帰飲子はその生薬構成から肌乾燥の症状に有効ですが、上記で挙げたそれ以外の症状にも効果があります。特に血虚(けっきょ)を基礎としためまいやふらつきに効果があります。

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文・女性とこどもの漢方学術院(吉田健吾)